
岡崎京子『東京ガールズブラボー』上巻表紙

岡崎京子『東京ガールズブラボー』下巻表紙
**【コメント】**はっきり言って世評高い「pink」より好きだ。実際「pink」より優れた作品なのではないかと実は思っている。岡崎自身は絵が荒れていてあまり好きでないというようなことを言っていたらしいが、いいさ、私は好きだ。(そもそもあのラフな絵に荒れるも何もあるのかなぁ? あのラフさは決して嫌いじゃないし、それなりに「理解者」のつもりでいたけれど、やっぱり、見る目がある人が見ると違うのかな?) 80年代初期。時代はバブルで激変する直前の東京。知らないだろう、そこの10代の君。東京ディズニーランドなんてまだ無かった。YMOがまだ解散していなくて、松田聖子は独身で、「アキラ」の連載だってまだ始まっていなかった。お台場なんか、ただの埋め立て地。あの東京はもう無い。狂乱の時代直前の不思議な明るさに満ちあふれていたあの東京は。全編にみなぎるこの切なさは何だ? 岡崎も若かったんだな。青春だな。…なっちゃんがね、夜の街の道路に寝転がって、星空を見上げながらつぶやくんだよ。「いつまでもこんな風でいたいな。いつまでも、いつまでも、こうしていたいな。このまま時間が止まっちゃえばいいのに。このままで、みんなといたい。大人なんか、なりたくない。」(下巻162頁) 読め! 読んで泣け! **【お話】**札幌在住の「ニューウェーブ少女」にして「おしゃれバカ娘」のサカエちゃんは、両親の離婚のおかげで思いもかけず母親の生まれ故郷東京に暮らすことになりました。飛行機の窓の外に近づいてくる東京の夜景はまるでICチップみたいだ。もう胸のドキドキが止まらない。遂にあの夢のテクノポリスTOKIOにやって来たんだ…。舞い上がったサカエちゃんは、金髪モヒカンで決めて登校したおかげで、転校初日から停学を食らいましたとさ。でも、そんなことでめげるようなサカエちゃんではありません。趣味を同じくする友、なっちゃん(自然再生処女)とミヤちゃん(躁鬱病)、を得て、夢のテクノポリスの探検へと乗り出して行きます。サカエちゃんを「僕のアーバン・プリミティブ・エンジェル」だと崇拝する同級生の犬山のびた君(ニューウェーブおたく)。そののびた君を影から熱い目で見守る丸玉玉子(赤ん坊少女後人造美女)。ツバキ・ハウスで出会って名前も知らないまま恋に落ちる男の子。大都会の人混みの中に杳として姿をくらます自販機エロ雑誌編集者、マーキン。そのエロ雑誌のグラビアに裸体をさらす「得体の知れないもの」ノリコちゃん。次々と登場する不思議な人々…。…書いていて気がついたけど、ストーリーを語ることによってこの話の面白さを伝えることは難しいな。やっぱり登場人物のキャラクターがこの話の魅力なのかな? (個人的には、一見普通の娘のようでいて、実はサカエちゃんよりもラディカルに過激ななっちゃんのキャラがいいな。) とにかく、突っ走れ、金田サカエ! 欲望剥き出し、ドーパミン垂れ流しで走りまくれ! 走って、走って、このアシッド・キャピタリズム(©小倉利丸)の荒野の彼方へ駆け抜けていけ! 巻末には何と当時のニューアカデミズムのスター浅田彰と岡崎の対談がついてます。え? 何で浅田彰が出て来なきゃいけないんだって? ここを読んでね。いやぁ、決まりすぎたね、このおまけは。 **【書誌】**●発行:JICC出版局●初版1993年1月20日(上巻)、2月10日(下巻)●ISBN4-7966-0547-9 & 548-7●Kindle版上巻●Kindle版下巻●初出:月刊CUTIE1990年12月号~1992年12月号連載 (1999.06.07新規、06.08改訂)