
岡崎京子『ハッピィ・ハウス』上巻表紙

岡崎京子『ハッピィ・ハウス』下巻表紙

岡崎京子『ハッピィ・ハウス』上下合冊版表紙

**【コメント】**岡崎の長編の中で一番愛らしくて幸せな雰囲気に溢れているのはこの作品なのではないかと思う。最初に読んだ時点では、はっきり言って「pink」よりもこっちの方がずっと好きだった。「pink」から約1年後の作品なのだけど、岡崎が「ちゃんとした長編」を描く力を身につけたのはこの作品からなんじゃないかな? さっきから「pink」の悪口ばかり言っている。でも、どうも「pink」は道具立てばかり凝っていて、頭で描いた作品のような気がする。その点、「ハッピィ・ハウス」はもっと自然で、頭にではなく、ハートにグッと来る作品のような気がするぞ。 **【お話】**鈴木るみ子ちゃんは13歳の中学2年生。お母さんは女優、お父さんはテレビ局のディレクター。元々とても普通とは言えない家庭の子でしたが、ある日突然、お父さんが「家族を辞める」と宣言して家を出て行ってしまったので、家の中はますます異常な状態になってしまいました。その晩、17歳のお兄ちゃんも、「実は俺はオヤジの子ではなかった」と言い残して家を出て行きます。ショックのあまりに一晩眠れず、翌日ふらふらになって学校から家に帰ってくると、何と、お母さんがもう若い男をくわえ込んできている現場に遭遇。動転してその場を逃げ出してしまったるみ子ちゃんですが、考えてみれば腹が立ってくる。何であたしが逃げなければならないんだ。悪いのはお母さんじゃないか? 復讐心に燃え立つるみ子ちゃんは「鈴木家乗っ取り」を画策します。留守の間にマンションの玄関の鍵を付け替えて、お母さんを閉め出してしまったのです。でも、そうなるとるみ子ちゃんは家にたった一人。明日からの生活費をどうやって稼いで行けばいいのでしょう? 援助交際? いや、いや、るみ子ちゃんが思いついたのは空いた部屋を利用してのラブホテル「オテル・ド・鈴木」の経営でした。超ヤリマンの中学三年生、セーコ先輩の紹介でお客もどんどん集まり、順調な滑り出しを見せたかのように思われましたが、貸し切りの乱交パーティーがとんでもない騒ぎになって、早くも挫折。そうしている内にも、嫁との折り合いが悪いシゲさん(昔出入りしていたお手伝い)が孫を連れて飛び込んでくるは、乱交パーティーに出ていたマツダ君は何が気に入ったのか居着いてしまうは、学校ではるみ子ちゃんを標的に虐めが始まるはで、事態はますます混沌としてくる。マツダ君は、お兄ちゃんの同級生だけど、お兄ちゃんとは犬猿の仲。お兄ちゃんの彼女を輪姦した過去のせいもあるが、それよりも、どうやら、マツダ君はるみ子ちゃんの腹違いのお兄さんらしい…。途中で、ニューハーフのお姉さんが出てきたりするのはちょっとよけいな気がするけれど、兎に角面白い。 くわえ煙草の中学生るみ子ちゃんの、失われた「家族」を巡る、メルヘンチックな冒険譚です。 **【書誌】**●発行:主婦と生活社●初版1992年1月15日(上下とも)、愛蔵版2001年7月1日(上下合冊全1巻)●ISBN4-391-92016-6 & 92016-8、合冊版ISBN: 4391920603 ●Kindle版2006年5月1日●初出:コミックギガ1990年7月10日号~1991年10月8日号連載、ただし最終2話は書き下ろし (1999.06.08新規、改定2021.12.13)